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震災の地の蕗の薹 [シルバーウィングでGO]

千葉県に戻るに当たって,我が山の神に持って帰るものが何もない。物見遊山に来たわけではないので我が山の神も何も言わないだろう。
妹の家の敷地はかなり広いが,いまは,ただの空き地になっている。その空き地の一角に,蕗の薹が沢山顔を出している。我がお袋様はその蕗の薹をとってきてなにやら作り始めた。
まず,細かく切って水に浸し,一晩あく抜きをする。次の日になると,ボール鉢の水は茶色っぽくなっている。かなり沢山のあくが出たようだ。我がお袋様はもう一度水を入れ直してあく抜きをする。そうしてあくを出した蕗の薹を油で炒める。そのあと,みそを加えてみそ和えにした。
「風味が全然無くなってしまった。」
我がお袋様は,出来映えにかなり不満らしい。そこで不肖ながら,私が後を受けて少し味を付け直した。みりんを加えてもう一度熱を通し,さらにユズ胡椒で味を調えた。しばらく放置して熱を冷ますとあら不思議,蕗の薹の風味がしっかりと出でいる。何のことはない,お袋様が風味を感じられなかったのは,蕗の薹のみそ和えが熱過ぎたからだった。
P1020807.JPG
お袋様は,私のためにウドも買ってくれた。そのウドの皮を捨ててしまおうとする。
「ちょっと持って。そのウドの皮捨てないで。」
「何をするの,こんなもの。」
我がお袋様にとって,ウドの皮は捨てるしかないもののようだった。我が家では,我が山の神がきんぴらにして出してくれる。この,ウドの皮のきんぴらが堪えられないのだ。我がお袋様には不思議でしょうがないらしい。
ウドの皮のきんぴらを自分で造ったことはない。多分,我が山の神はこのようにしているだろうという想像だけで味を付けると,これが結構いける。妹も,妹の娘も「おいしい」と言ってくれる。蕗の薹のみそ和えも,なかなかの評判だ。
我がお袋様は,せめて何か持たせようと,蕗の薹のみそ和えを小さなタッパーに入れて持たせてくれた。有り難い。持ち帰って我が山の神に食べさせると,蕗の薹の風味をしっかりと楽しむことが出来たようである。
それにしても,避難所で生活している人たちが,私が味わったようなささやかな幸せを感じることが出来るようになるのは,いつのことだろう。
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