今が人生最盛期、私の人生これからだ。パート２

いよいよ退職である。
６０歳定年であるから、誕生日の前日をもって満一歳となす、という規定があるので、４月１日の馬鹿の日生まれの私は３月３１日が６０歳に達した日なのである。

職場で机の片づけをしていると、以前一緒に仕事をしている人からいくつも電話がかかってくる。いずれも、私の退職はまだ先と思っているようであった。
おや、年よりも若く見られていたのかなと、密かににんまりとする。お世辞と知っていても若いと言われるのは嬉しいものだ。
自宅に手紙もいただいた。２０年以上前に少しお世話をした女性からのものだった。よく私のことを気にとめていてくれたものだと、普段の事務的な手紙と違い感激である。

職場への別れしな、花束やら贈り物などをいただいて買い換えたばかりのストリームに乗った。
感傷的になるかもとおそれていたが、そんなこともなく、明るい気持ちで職場に別れを言うことができた。人生これからである。人生いつも最盛期のつもりで、前向きに行くぞと決めている。
我が山の神もきっと同じ気持ちであるに違いない。
「ほら、背中が曲がっているわよ」
「曲がっていると、おじいちゃんになっちゃうよ」
我が山の神の叱咤が私に飛んでくる。あわてて背筋を伸ばす。やっぱりこれくらいの緊張が必要なのだ。緊張のない生活をしていると、老いが加速するのは間違いない。

おりしも、桜が満開となって、私を祝福している。


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