大震災 なんというビジネスチャンス

震災で，沢山つくらなければならないものがある。仮設住宅だ。当然，仮設住宅建設に関わる建設会社や土木会社などは空前の注文を受けるだろう。
建てられる建物は仮設住宅だけではない。沢山の家が流され，沢山の家が取り壊され，壊滅させられた家に代わる新しい家を建てる人も多いだろう。残念ながら我がお袋様の家もこのまま使い続けることは危険だと判断され，結局は取り壊さざるを得ないことになってしまった。東北地方だけでなく，全国の建築に関わる仕事をする人が忙しい仕事に追われることになるだろう。横文字で言えばビジネスチャンスである。ただ，このビジネスチャンスは，人の仕事を奪って出来たチャンスではない。人の弱みにつけ込んで出来たチャンスではない。人を助けるためのチャンスだ。

3月30日，友人から嫌な話を聞いた。国道45号線上のガソリンスタンドがガソリンを１リットル200円で販売したということだ。
驚いた。一体何でそんな値段になったのだろう。震災でガソリンが極めて手に入りにくくなっている事情はあった。何しろ首都圏ですら給油する車が長蛇の列をなした。私も何度か並んだが，ついに車に乗ることをあきらめてしまったほどだ。首都圏でもそうだから，被災地ではなおさらの筈だった。
それでも，１リットル２００円の理由はない。元売り会社から末端のガソリンスタンドに卸されるガソリン価格はそれほど高騰してはいないはずだった。

確かに，国際情勢を見れば価格上昇の要因はある。中東情勢が不安で，原油の供給が不安定になると考えられていたからだ。エジプトからリビアに飛び火したジャスミン革命が大きな原因だ。しかし，それでも200円は高すぎた。要するに，いくらで売ってもガソリンは売れるから，値段は付け放題というわけである。
残念な話だが，このガソリンスタンドの経営者は知っている人物である。高校の同級生である。一緒に十府ヶ浦の海岸で遊んだ中でもある。

ライフラインと言えば電気，ガス，水道だと思いつく。しかし，それだけではない。現在の社会ではガソリンや灯油もライフラインと言っても良いほど重要だ。そのライフラインと言っても言いガソリンを，自分の金儲けだけのために200円にした人間がいる。しかも，その顔を知っているというこの悲しさ。
200円で売ったその行為は，すぐに元売り会社に知れることになったようで，厳しい指導を受けたと聞く。元売り会社の方に良心があったということだ。ある友人は言った。
「あの商売のことは，このあたりの人はきっと忘れないだろうね」
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