3.11：山の神とシルバーウィング：SSブログ

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3.11　[シルバーウィングでGO] [編集]

２年前の地震や津波をどのように形容したらいいだろうか。色々思い浮かべるが，どの言葉もうまく当てはまらない。春日部市で建物が激しい音をたてて揺れているのが見えた時のこと，テレビで津波に追いかけられる車が呑み込まれていく様を見た時のこと，津波にさらわれた故郷の村を見た時のこと，恐怖や驚き，心配や不安と無力感，様々な感情がない交ぜになった気持ちだったと思う。今でも脳裏に残るその映像は，つい最近のことのように記憶に甦る。
私が育った岩手県野田村の家は既に無い。無くなったのは私の家だけではない，兄の二人の娘夫婦の家も流され，今は仮設住宅暮らしである。幸い仮設住宅は兄の家から近い。二人の娘は時々子どもを連れてやって来ることが出来るようだ。辛い生活が続いている被災者の中でも恵まれた方だろう。
私が最後に野田村の震災後の様子を見たのは去年の８月だ。未だに大きな瓦礫の山が消えていなかった。また，家々の土台を取り除き，それを一カ所に集めた新たなコンクリートの山が出来ていた。この始末にも，かなりの時間と手間と金がかかるだろう。
津波で多くの家が流されたところは新しい建築は許可されないから，新たな場所を決めて建築が始まる。既に，一部ではあるが公営の復興住宅が着工されているようだ。岩手県のホームページを見ると、予定されている124戸のうちの8戸が建設中と書いてある。野田村で被災した家のうち全壊は300棟を超える。124戸が建てられたとしても被災者全ては入れない。
被災者の中には復興住宅ではなく自分で建てたいと思っている人もいるだろうが，その人達は今の土地を手放して新たな土地を探さなければならない。津波に洗われた土地の値段はかなり安く抑えられるだろう。中には、建てて一年余りで家を失った人もいるそうだ。ローンを組んでいたら、その負担と新たな負担に耐えられるだろうか。負担に耐えられない場合は，復興住宅に頼るしかない。

震災から２年経つのに，復興の進捗状況ははかばかしくない。何しろ，あの瓦礫の山が未だにそのままの状態だということが，端的にそのことを物語っている。
つい先だっての2月22日に発表された環境省の災害廃棄物処理進捗状況によれば，岩手，宮城，福島３県の瓦礫の処理割合は全体で46パーセントだそうだ。しかし，県によってその進捗状況はかなり違う。宮城は51パーセントと半分以上進んだが岩手は39パーセント，福島は31パーセントしか進んでいない。我が故郷の野田村は33.6パーセントで遅れが目立つ。早く何とかしてくれと言いたいところだが，国の動きは遅々として進まない。
http://kouikishori.env.go.jp/news/pdf/20130222a.pdf

2011年３月３１日，私が撮った写真

去年の8月，野田村に帰省した時，私はついに瓦礫の山にカメラを向けることが出来なかった。嫌でも目にしなければならない住民は，あの瓦礫を見るたびに辛い思いがこみ上げてくる筈だ。今年も８月には我がお袋様の四十八もあって帰省しなければならないが，またあの瓦礫と向き合わなければならないかも知れない。
なお，テレビの報道によれば，用地の取得や造成などが，国の規制によってなかなか進まないという現状がある一方，復興とは関わりのない事業に復興費が使われているということだ。調査捕鯨を妨害するシーシェパード対策費とか沖縄県の道路整備とか，海外との交流事業などだそうことだが，口の悪い人間なら「ざけんじゃねえ」と怒鳴りたくなるところだ。私に言わせれば，「流用」ではなく違法横流しである。使った事業体に返還を求めたいくらいだ。結局，学校の耐震事業などには使ってもいいことになったそうだが，これだってなぜだと言いたいところだ。「ったくもう何を考えているんだ」。

さて，政権は民主・国民新から自民・公明に変わった。実体経済は基本的に変わっていないのに，円安と株高だけが進行して，世はアベノミクスで沸き立っている。しかし，株高は被災者には何の利益ももたらさないだろう。それだけではない。灯油やガソリンの値上げという形で円安だけは重くのしかかっている。消費税も8パーセント，10パーセントと上がると被災地の人々の生活は益々苦しくなるだろう。
安部総理大臣は真面目に働く者が報われる政治を目指していると聞いた。とすれば，株や為替で儲ける者よりも，被災地で額に汗して働く者にもっと目を向けてもらいたいものだ。

色々書き立ててきたが，なんだが読み返していると気持ちが沈んでくるような話ばかりだ。震災に関する話だからやむを得ないとも思うが，もう少し前向きで明るい気持ちになれることにも目を向けた方がいい気がする。歳を取ると，何だか愚痴っぽい話が多くなるなあ，イカンイカン。